本書はコンサルティング力を身につけて、戦略的な分析や決断を行いたいと考えている方に、実際に起きた事例を題材にして、使えるフレームワークを体得できるように工夫しました。
実例を用いた図解や、4つの選択肢で何故その解答が正しいのかを説明することで、みなさんのビジネスシーンに置き換えて考えていただけるように解説しています。いまよりもさらに仕事力を高めて、ぜひ世界で通用するビジネスパーソンへと進化を遂げてください。
文庫化にあたって
最近、「○○力養成講座」というタイトルの本を、書店で見かけることが多くなりました(私も何冊か出してます……笑)。売行きが良い本も多いようです。それにしても、こういった堅苦しいタイトルのビジネス書が受け入れられるというのは、とても素晴らしい傾向だと思います。
さかのぼること約3年前、2005年4月に、『ビジネス力養成講座 最新MBAエクササイズ26題』(飛鳥新社)という本を出版しました。本書の原版です。当時ビジネス界をにぎわしていた身近なケースをクイズ形式で解説する、問題集的なスタイルの本に仕立てました。読者の方に気に入ってもらえたようで、増刷されるぐらいのヒット作になったのを覚えています。
とはいえ、「養成講座」と冠のついた、ストイックでボリューム満載の大判本。これを教科書に勉強された方が大勢いたというのは、ちょっとした驚きでした。それだけ、進化を渇望している向上心の高い方が多かった、ということなのだと思います。やっぱり日本人のレベルは高いと実感させられますね。
学ぶ意欲があるビジネスパーソンは進化します。受身ではなく、自分から問題を解く姿勢を持って本と対峙することで、“脳みそが活性化”されるのです。別の言い方をするなら、答えを選び出すためには考えるプロセスが不可欠。また、考えるためには、その手法と材料である知識が必要になります。こうした一連の流れで脳が進化することを念頭に置くと、問題集というスタイルは、まさに学習手法の正解なのかもしれませんね。
コンサルティング会社では、日々の業務がまさにこの本のケーススタディそのものです。数週間から数カ月ごとに、新しいプロジェクトで答えを考え出すことが求められます。クライアント企業の基本情報は短期間で吸収するのは当たり前、そのうえで考えるテクニックを駆使して答えを導き出せるかが勝負なのです。
そんな濃密な時間を過ごすからこそ、コンサルティング会社で経験を積むと、短期間でビジネスパーソンとしての基礎体力を身につけることができるのだと思います。
今回の文庫化にあたっては、この「濃密感」を意識して編集作業を進めました。ページ数の制約もあり問題数も26題から20題に減らしましたが、もともと『ビジネス力養成講座』は、情報量も問題数も多くてお腹一杯……といった読者の方の意見が多かったので、ボリューム感にも考慮しました。現場感のある身近なケースを題材に、短時間で考える力を養成できるような本に仕上げたつもりですが、読者の皆さんの感想はいかがでしょうか?
「さっと読めて、ごりごりと頭を回転させられて、運動後のような爽快感を味わえた本」そんな印象を持ってもらえたら嬉しいなと思います。それこそが、「仕事筋トレーニング」と銘打った本シリーズの狙いなのですから。
日本のビジネスパーソンが急速に、しかも飛躍的に進化することを願って、また次作の執筆に取り組もうと思います。
2008年5月 斎藤 広達
仕事筋シリーズ