■目次 訳者まえがき 1 献辞 5 序文 15 本書の内容 18 本書の特徴 18 引用例について 20 計算の簡略化 21 頻出するウエブサイト 21 謝辞 25 プロのマネジャーに対する謝辞 25 学問的研究 33 特別な謝辞 34 第1部 さあ始めよう 35 第1章 分析プロセス 37 投資銘柄の選択 37 株式の分析――最強の投資銘柄の絞り込み 38 速やかな予備選択テスト 38 詳細な分析 41 売り時 45 まとめ 46 第2章 リスクの評価 47 株式の市場価値 50 相場の方向 52 下げ相場での強い産業の見つけ方 53 企業に特有のリスク 54 企業に特有のリスク(続) 58 まとめ 60 第3章 スクリーニング 61 クイッケンの「グロース・スクリーン」 63 クイッケンの「バリュー・スクリーン」 66 MSNマネーの「不人気なバリュー株ファインダー」 69 マルテックス・インベスターの「防弾株式」 73 スクリーニング法 76 レディーメードの画面 76 まとめ 77 第2部 分析ツール 79 第4章 分析ツール1――アナリストの格付けと予想の分析 81 アナリストとはどのような人々か 82 アナリストの格付け 83 「売り」という2文字 84 コンセンサス格付け 86 「強い買い」は「売り」よりも儲かるのか 88 アナリストの数 90 センチメント指標 92 アナリストの予想利益 95 予想利益のトレンド 97 予想外の業績修正 101 売上高の予想 103 レギュレーションFD 104 調査レポート 105 まとめ 106 第5章 分析ツール2――株式評価 107 インプライド成長率 108 GARP 113 配当金 116 まとめ 118 第6章 分析ツール3――目標株価の設定 119 目標株価の計算プロセス 120 シスコシステムズ 128 まとめ 133 第7章 分析ツール4――産業分析 135 事業 135 産業の成長見通し 136 産業の集中度 140 細分化された新興市場で勝ち組企業を見つける 142 業界情報 149 まとめ 149 第8章 分析ツール5――ビジネスプランの分析 151 序 152 注意すべき競争上の優位性(過大評価してはならない要因) 161 ビジネスプラン・スコアカード 164 まとめ 164 第9章 分析ツール6――経営陣の能力 167 役員と取締役の能力 167 明朗会計 169 安定した利益成長 170 経営陣の株式保有率 171 まとめ 173 第10章 分析ツール7――財務健全度の分析 175 財務健全度 175 財務面から見た問題企業の分類 176 問題の単純化 177 低債務と過剰債務企業の分析 177 現金燃焼企業の分析 179 詳細な財務健全度テスト 186 社債格付け 205 社債のリスク・プレミアムでリスキーな債務企業を特定する 210 まとめ 214 第11章 分析ツール8――収益性の分析 217 利益はどこからもたらされるのか 217 ヒストリカルな売上高の分析 221 売上利益率の分析 226 売上総利益率 226 営業利益率 228 売上純利益率 228 各利益率の比較 228 売上総利益率 229 営業利益率 230 利益率の分析 233 営業利益率の比較 234 間接費の分析 237 収益性指標 237 限界ROA 246 キャッシュフローの分析 247 EBITDAと営業キャッシュフロー 255 フリーEBITDA 257 まとめ 258 第12章 分析ツール9――赤信号を見抜く 261 売上伸び率のトレンド 263 売上債権と棚卸資産 268 棚卸資産 272 キャッシュフロー計算書 276 退職年金収支 280 黄信号 281 まとめ 283 第13章 分析ツール10――大口株主の株式保有率 287 機関投資家の株式保有率 287 インサイダーの株式保有率 290 インサイダーの保有率の分析 290 まとめ 293 第14章 分析ツール11――株価チャート 295 トレンド 295 移動平均 297 下降トレンドは避ける 299 リスクゾーン 300 チャートの種類 301 出来高 302 まとめ 302 第3部 分析プロセス 303 第15章 投資銘柄の速やかな選択 305 「企業概要」 306 「スナップショット・レポート」 307 株式評価レシオ 309 「ハイライツ・レポート」 312 評価レシオの比較 313 うわさ情報のチェック 314 まとめ 316 第16章 バリュー投資のプロセス 317 景気の循環 318 正常化 319 バリュー投資の分析プロセス 319 ステップ1――アナリストの格付けと予想の分析 321 ステップ2――株式評価 323 ステップ3――目標株価の設定 326 ステップ4――産業分析 331 ステップ5――ビジネスプランの分析 333 ステップ6――経営陣の能力 335 ステップ7――財務健全度の分析 337 ステップ8――収益性の分析 338 ステップ9――赤信号を見抜く 341 ステップ10――大口株主の株式保有率 342 ステップ11――株価チャート 342 売り時 343 まとめ 345 第17章 グロース投資のプロセス 347 有望なグロース株 348 グロース投資の分析プロセス 349 ステップ1――アナリストの格付けと予想の分析 350 ステップ2――株式評価 355 ステップ3――目標株価の設定 357 ステップ4――産業分析 361 ステップ5――ビジネスプランの分析 364 ステップ6――経営陣の能力 366 ステップ7――財務健全度の分析 368 ステップ8――収益性の分析 369 ステップ9――赤信号を見抜く 374 ステップ10――大口株主の株式保有率 379 ステップ11――株価チャート 380 売り時 381 まとめ 383 第4部 追加分析ツール 385 第18章 業績発表とコンファレンスコール 387 公表利益 388 まとめ 390 第19章 詐欺・ペテン・株価煽りによる売り逃げを見抜く 391 チャンス到来 391 自転車操業 392 株価煽りは儲かるのか? 393 こうした手口のチェック法 394 まとめ 395 付録A 財務諸表の読み方 397 損益計算書 398 バランスシート 399 キャッシュフロー計算書 401 データの入手先 403 見積りとGAAPの数字 404 付録B 分析スコアカード 407 バリュー株分析スコアカード 408 グロース株分析スコアカード 411 付録C 用語集 419
2003年6月
関本博英
本書は株式を分析するための本である。私はこの本を執筆することで多くの経験を積んだ。本書を執筆し始めたころ、私は自分でこのテーマ(株式の分析)について多少は知っているだろうと思っていた。株式の分析について人に教え、多少なりともそれについて執筆し、何年間も実際に株式投資を実践してきたからである。著名・無名を問わず、さまざまな投資専門家のハウツー本を読みあさり、自分なりにそこに書いてあることを研究してきた。そしてそれらの戦略を実践して結果を詳細に分析してきたのである。専門家たちの投資法を統合し、自分なりの投資戦略を確立しようと努力してきた。
私は本書の執筆に当たって15人のプロのマネーマネジャーやマーケットアナリストらと会見した。執筆し始めたときはまさかこんなことをしようとは思わなかった。そのなかには、手堅い長期の資産運用でベンチマークを上回るパフォーマンスを上げている超一流のミューチュアルファンドのマネジャーもいた。このほか、私がほかのプロやその著作物から知った革新的な投資戦略の専門家であるアナリスト、そうした投資手法を自らの資金で実践しているマネーマネジャーもいる。これらのプロの多くは私との会見に快く応じてくれた。
しかし、私は、彼あるいは彼女たちの内心の期待を裏切ったのかもしれない。おそらく彼らの多くは、私が、自分たちひとりひとりについてその幼年時代、仕事ぶり、オフィスの環境、投資手法などについてそれぞれ1章を割いて紹介すると思ったであろう。しかし、私はそうはしなかった。彼あるいは彼女たちとの会見の内容を、①投資銘柄の見つけ方、②それらの分析法、③売り時の決定――の3項目にまとめてしまったのである。私は以前にもマネーマネジャーと会見したことがあるが、その話の内容は今回のようなレベルではなかったし、またこのようなテーマについての会見でもなかった。それはいわば職場実地訓練的なもので、私は最初の2人と会見したときは質問の適切さを欠くという点で大きなへまをやってしまった。それからはだんだんと彼らとの会見のコツも分かるようになった。
しかし、株式投資のプロと会見するということは彼らの著書を読んだり、その講演を聞くこととはまったく次元の違うものだった。まず最初に気をつけなければならないのは、もし皆さんが彼らの著書をすでに読んでいたり、その投資手法を知っているのであれば、それに関する同じ質問を繰り返してはならないということである。その代わりに質問の内容をさらに突っ込んで、「買われ過ぎの状態をどのように判断されますか」「優れた経営者を見分け方は?」「その産業の最強企業の見抜き方は?」「あなたの売りシグナルとは?」――などの質問をぶつけるのである。
話が思わぬ方向に向かってしまうことも少なくなかった。例えば、私はニコラス・ガーバーが懇切丁寧に説明してくれるまでは、マイケル・ポーターの「(企業競争における)5つの力モデル」についてはまったく知らなかった(それからほぼ1週間後のケン・シーアとの会見の席で同氏がそれについて触れたとき、私はそのコンセプトをよく知っていますよといった顔で対応できた)。ポーターのこの5つの力モデルは「分析ツール5――ビジネスプランの分析」のところで使わせてもらった。このほか、会見の内容があまりにも学問的で読者の関心が薄れてしまうのではないかと思われるものもあった。しかし、シカゴ大学ビジネススクールのジョゼフ・ピオトロスキー教授の学問的研究は、第10章の財務健全度の分析のところで使わせてもらった。
そして私にとって最大の驚きはバリュー投資に関するものだった。私はバリュー投資についてはあまり知らなかったのでさまざまな本を読みあさったところ、そこには低PER株を購入すれば人気株よりも高いパフォーマンスが得られると書かれてあった。そこでさっそくそのようにやってみたが、その結果は必ずしも芳しいものではなかった。また低PERのボロ株を買ったところ、その後も下げ続けたこともあった。何人かのマネーマネジャーと会見したとき、彼らが実際にやっていることは私が読んだバリュー投資に関する本の内容とは似ても似つかぬものだということが分かった。彼らは低PERの株などはけっして買わないのである。彼らが買うのは一時的な業績不振で下げた優良株である。本に書いてあることと現実との何という違いだろうか。
本書にはこれらプロのマネーマネジャーやアナリストが語ってくれた数多くの知恵が盛り込まれている。しかし、彼あるいは彼女たちが私に語ってくれた投資手法をひとつずつ取り上げなかったことは、その尽力に報いなかったという点で本当にすまないと思っている。本書では彼らのそうした投資手法はさまざまな分析ツールとステップにまとめられている。
以上のような速やかな予備選択テストによって不適切な銘柄を投資対象から外していくが、そのコツが分かるようになればわずかな時間で投資銘柄の取捨選択ができるようになるだろう。そして残りの銘柄を以下のような詳細な分析のふるいにかけていくのである。